【インタビュー】世界が注目!アオザイデザイナー・シーホアン氏の考えるアオザイとは

2017年5月26日更新

現在世界で注目されているベトナム人デザイナーのシー・ホアン(Si Hoang)氏。ベトナムの伝統衣装であるアオザイの保存、維持、発展に尽力している第一人者。2017年には旅行者向けに『シーホアンショー(アオザイショー)』をオープンし、シーホアン氏が舞台照明・着衣デザイン・演出までトータルプロデュース。

今回はそのシーホアン氏にインタビューしてみました。

アオザイデザイナー・シーホアン

1962年生まれ。デザイン大学を卒業後、本格的にアオザイのデザイナーとして従事。1991年にホーチミンで開催されたミスアオザイコンテストで受賞を飾り、その後はアジアだけではなく、アメリカ、ドイツ、ベルギー、といった欧米でも活躍。日本とも大手企業(本田)や日本の伝統手工芸職人と積極的にコラボレーションをしている。

プロデザイナーを志望されたのはいつからですか

シーホアン氏「本格的に目指すようになったのは、デザイン大学を卒業してからですね。卒業後1987年から約10年間は下積みとして日々勉強でした。ただ、下積みといってもその中ではミスコンテストのアオザイのデザインなども手掛けていましたし、91年には初めて賞も受賞しました。皆さんに認めてもらえたきっかけですね。その後は学校の講師としても携わり、デザイン会社も設立して今に至ります」

筆者「現在では世界で活躍されていますね」

シーホアン氏「1995年にアメリカでも自分のデザインが認められました。嬉しかったですね。私がというよりは、ベトナムの誇りであるアオザイが認められたということなので。ベトナムに戻ってきたあとは少数民族と交流して、彼らからインスピレーションを得ました。それからですね。アオザイに本格的に携わり、デザインだけではなく文化を守っていきたいと考えたのは」

どうしてアオザイだったのでしょうか?

シーホアン氏「アオザイは昔から今に至るまで、ずっとベトナムにおける伝統衣装でした。また、54の民族からなるベトナムは、衣装も多彩で自由度が高く、また時代とともにアオザイは変化し、近代では毎年新しいデザインが出てくるまでになりました。だから、私もそのベトナムの象徴ともいえるアオザイに携わりたかったんです。

アオザイは日本人にとってもとても魅力です。シーホアンさんが考えるアオザイの魅力を教えてください

シーホアン氏「そうですね。まずデザイナー目線で言えば、研究のしがいがあるということでしょうか。アオザイの歴史は非常に古いですし、歴史の変遷に伴いデザインも大きく変わっています」

筆者「確かに。これもアオザイなんだ!っていうものもたくさんありますよね」

シーホアン氏「ええ。時代や地域によっても変化していますね。最近は外国の方にも知られるようになってきて、アオザイに関して幾多の質問を受けることがありますが、その中にはニッチすぎて私も応えられないものもありました。だから、常に勉強なんです。でも、それが楽しいんです。楽しくてしかたないくらい。おかげでいまではすべてのアオザイを知ることができました」

筆者「アオザイは昔から大衆に溶け込んでいるというのも魅力ですよね」

シーホアン氏「そうなんです。アオザイの一番の魅力といってもいいかもしれません。学校でも会社でも祭事でも、アオザイは幾多着る機会があります。そして、優美と自由さを兼ね備えた美しさも特徴。ベトナム人にとっては、アオザイは美しき女性の象徴でもあるんです」

子供のアオザイもデザインしているようですね。その思い入れを聞かせてください

シーホアン氏「このアオザイは子供たちが描いた絵をプリントしたものなんですよ。子供たちの自由な想像力と豊かな感性はデザインの源。そして、子供のうちからアオザイを身近に触れて、大人になってもアオザイの美を忘れないで引き継いでほしい。そういう思いで作りました。アオザイの文化を守るのは、まさに現在の子供たちです」

続いて日本との繋がりに関していくつかお聞きしたいと思います

シーホアン氏「日本とのご縁となるきっかけは、2003年にNHKが私の会社をクローズアップして、アオザイ文化を紹介するテレビ番組を組んでくれたことです。NHK は日本では誰もが知っているテレビ局でしょう? そのおかげで日本の大手企業から幾つかコラボレーションの依頼をいただきました。いままで日本へは10回以上渡航しています」

筆者「コラボレーションは企業だけではなく、日本の職人とも、とうかがっております」

シーホアン氏「ええ、日本の伝統手工芸職人の方と何人か。日本には“着物”という素晴らしい伝統衣装がありますからね。その染師の職人の方ともご一緒させていただきました」

日本の着物とベトナムのアオザイ。デザインや美しさでアオザイと類似点は感じますか?

シーホアン氏「アオザイと着物は似ていると思います。素材や刺繍、機織り技術にはシンパシーを感じる部分が多々見受けられます。ただ、相違点もありますね。例えば、着物は一人で着るのが難しいので人の助けが必要だったり、着こなすのに時間と技術が必要だと認識しています。一方でアオザイは……、要するに“気軽”。誰もがいつでも着ることができます」

筆者「なるほど確かに。他に共通点は思い当たりますか?」

シーホアン氏「これは精神的な共通点になるかと思いますが、着物もアオザイも一度着ると、不思議と礼儀正しくなりますよね。無意識的に背筋を伸ばしたり、周りの人の視線をいつも以上に気にしたり。これは伝統衣装を着ているという価値を自ずと理解しているからだと思います」

洋服という大きな括りでいうと、日本人とベトナム人のファッションセンスは似通っていると思いますか?

シーホアン氏「ええ、強くそう思います。まず第一に日本人もベトナム人も女性を中心にファッションや流行に非常に敏感です。それに自分だけのこだわりも強いです。日本人の美的感覚はベトナム人にも通ずるものがあると思っております」

シーホアンショーについて。こちらのコンセプトを教えてください

シーホアン氏「このショーは単なるファッションショーでもなければアオザイショーでもありません。背景に流れる音楽は演目ごとに異なり、光と闇を使い分ける照明、それと洋服による演出を重要視しています」

演目では民族性に富んでいたと感じましたが、どんなことを観客に伝えたかったのでしょうか?

シーホアン氏「ベトナムには4000年の歴史があり、それがいまでも続いています。その歴史のワンシーンをかいつまんで伝えたいと思っていました。人がその国の歴史を知る一番手っ取り早いのは博物館に行くことです。しかし、このショーは歴史博物館とは決定的に異なるんです。見て楽しみ、耳で聞いて楽しむ。展示品に書いてある説明書きを読んで理解するのではなく、向こうの方(演者・演出)から訴えかけてくる。観客は楽しく、興味深く歴史を学ぶことができるでしょう」

筆者「いろんな色形をしたアオザイもたくさん出てきましたね」

シーホアン氏「ええ。自分のデザインしたアオザイも多々ありますので、アオザイを皆さんにアピールすることによって、アオザイの発展を支えることができ、1人でも多くの観客にアオザイのすばらしさを知ってもらえるよう努力しています」

筆者「本日は貴重なお時間本当にありがとうございました」

アオザイに生涯を支えるシーホアン氏の柔らかな眼差し

当初シーホアン氏には30分のインタビューの時間をいただいておりました。しかし、終わってみれば90分もの長い時間を拝借することに。シーホアン氏がアオザイについて語る際の真剣かつ柔らかな眼差し。そこから感じるのは日溜まりにも似た温もり。子供に注ぐのと同じような、アオザイへの満ち溢れた愛情でした。

【動画】インタビューの様子

アオザイショーシーホアンインタビュー

この記事をシェアする

ホーチミン観光情報ガイドが最近書いた記事

おすすめの記事