【インタビュー】カンボジアで懸命に生きる少女の夢は?
2023年2月5日更新
場所はカンボジアのシェムリアップ。観光の中心からトゥクトゥクで30分ほど離れたロリュオス遺跡に向かう道中、道端で出会った毎日サトウキビジュースを売る女の子、ノウちゃん。今回は普段の生活ではあまり交わることのない、クメール女性の人生の一端を覗いてみました。
毎日ここでサトウキビジュースを売っているの?

ノウちゃん「うん、そうよ。大体朝の8時から17時くらいまでかな。お父さんが戻ってきたら私も帰れる」
筆者「お父さんはお店をやってるんだ?」
ノウちゃん「ええ。道端で屋台食堂をしているの。でも、お客さんがあんまりいないから私もここでサトウキビジュースを売って少しでも稼がないと(笑)」
筆者「いまノウちゃんは歳いくつ?けっこう若く見えるけど……」
ノウちゃん「年齢?13歳よ」
筆者「えっ?本当に!」
ノウちゃん「なあに、もっと年取っているように見えるの?でも仕方ないかな。一日この日差しが厳しい炎天下にいるからね」
筆者「いや、そうじゃなくて……」
ここで売ればけっこう稼げるの?
ノウちゃん「ぜんぜんよ。はじめは観光客目当てだったけど、外国人ってみんなバスとか車で遺跡まで行くから、こんな小さな屋台なんかで停まってくれないわ」
筆者「じゃあ、今回みたいにトゥクトゥクで行く観光客とか現地人が立ち止まるんだね。ひと月でどのくらい稼げるの?」
ノウちゃん「そうね。だいたい50ドルくらいかな。でもお父さんのお店の稼ぎを入れても200ドルいかないから、生活は大変なの」
お母さんはいないの?
ノウちゃん「うん。私が10歳の時に病気で死んじゃった。お金がないから病院に行くこともできなかったってお父さんが言ってた。私はよく分からないけど、いまのカンボジア政府のせいで仕事がないんだって」
筆者「でもノウちゃんはまだ13歳だよね。学校は?」
ノウちゃん「小学校は卒業したけど、中学校は行ってない。最初だけ行ったけど、お父さんに“お金がないから働いてくれ”って言われてすぐに辞めたの」※カンボジアでは義務教育は9年間だが、まだまだ就学率は低いのが現状。
筆者「ノウちゃんにとって、お父さんは厳しい人なの?それとも優しい人?」
ノウちゃん「うーん、どうだろう。お客さんが少ないときは機嫌が悪くて怖いかな。雨季の時期はとくにね。でも、お父さんもお母さんがいなくなっちゃって大変なんだと思う。お母さんが生きているときは生活はそれほど悪くなかったし、私も毎日学校に行ってたから。お店の手伝いなんてしたことなかったもん(笑)いつも友達と遊んでたよ。」
筆者「じゃあお母さんがいなくなっちゃってから、生活が変わったんだ?」
ノウちゃん「うん、だと思う。今思えばだけどね」
将来やりたいこととか、夢ってある?

ノウちゃん「本当は学校に行ってもっと勉強したいの。ほら、いまでも勉強してるのよ、私(学校の教科書をリュックから取り出した)。きちんと学校を出て会社で働くことができれば、お父さんを助けることだってできるでしょ。プノンペンで働くことだってできると思うの。だから、将来のやりたいことはプノンペンで働くこと。夢は学校に通うこと!」
筆者「じゃあその夢を叶えるために、いまは仕事をがんばっているんだね」
ノウちゃん「そういうこと。友達と遊びたいと思うこともあるけど、でもお父さんが大事だから。だから仕事もがんばれるの」
筆者「ありがとう、長々と話しちゃったね」
ノウちゃん「こちらこそ、ジュース買ってくれてありがとう!」
カンボジアの現状に立ち向かう力強い少女の眼差し
サトウキビジュースは一杯500リエル。日本円に換算するとわずか13円程度です。わずか13歳の少女が学校を捨て、1日中屋台に立って炎天下の中毎日休みなく売り続ける。しかし、彼女は決して特別ではなく、カンボジアには彼女のような生活者がたくさんいるというのもまた現実です。学校に行って勉強する。放課後に友達と遊んで屈託ない笑顔で笑いあう。おおよその日本人にとってはありふれた日常。それをはっきりと“夢”と語る彼女の羨望の眼差しは、掛け値なしに純粋そのものでした。そして、筆者がカメラを向けると、彼女はレンズ越しにとびっきりの笑顔を見せてくれました。
カンボジア観光に訪れた旅行者は、少なからずカンボジアの光と影の部分を垣間見ることでしょう。そこで何を想い、何を考えるのか……、異国の旅をどうぞお楽しみください。
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