「ベトナムでピックルボールがすごく流行っているらしい」
そんな話を聞いて、実際に自分の足で街を歩いてみることにしました。
向かったのは、外国人にも人気のエリア、タオディエン。事前に話を聞いてはいたものの、正直「そんなに?」くらいの気持ちでした。
でも歩き始めてすぐ、その予想は裏切られました。バイクで少し走ればコートが見え、路地に入ればまたコートがある。大きなスポーツ施設だけでなく、住宅地の奥や、まさかこんなところにという場所にもコートが顔を出します。10分ほど歩いただけでコートを3つも見つけました。
日本でピックルボールをしようと思うと、まず「できる場所を探す」ところから始まることが多いと思います。でもホーチミンでは、探すまでもなくコートが街の風景の一部になっている。話を聞くだけでは分からなかった広がりを、歩いてみて初めて実感しました。そしてこれはタオディエンだけの話ではなく、今、ホーチミンのあちこちで同じような光景が見られます。
歩いていて面白かったのは、コートの周りの雰囲気です。夕方になると仕事帰りらしき人たちが集まってきて、ラケットを片手に世間話をしながら順番を待っている。子ども連れの家族がいたかと思えば、明らかに旅行者らしき外国人グループもいる。年齢も国籍もバラバラな人たちが、同じコートを囲んで自然と混ざり合っている光景は、見ていて単純に楽しいものでした。「観光でこんな景色に出会えるんだ」という発見も、今回歩いてみて得た収穫のひとつです。
なぜここまで広がったのか
ピックルボールは、テニスやバドミントン、卓球のいいとこ取りをしたようなラケットスポーツです。ラケット競技の経験がなくても、意外とすぐにラリーが続くので、誰でも気軽に始めやすいのが魅力。この「気軽さ」が、ベトナムの人たちの感覚にうまくハマったのかもしれません。
「映画行こう」「カフェ行こう」と誘うのと同じくらいの温度感で、「ピックルボールしよう」と誘い合う。競技として取り組む人もいれば、友達との遊びや交流の延長として楽しむ人もいる。そのゆるさと自由さが、ベトナムでの広がりを後押ししているように感じました。
日本とはちょっと違う、ベトナムでの楽しみ方
魅力はコートの多さだけではありません。場所によりますが、1時間あたり1,000〜2,000円ほどで、専用のハードコートを借りられてしまうお手頃さも見逃せないポイントです。日本ではまだ専用コート自体が貴重な存在なので、この価格でみんなでワイワイ本格的に遊べる環境は、正直うらやましくなります。
さらに、現地でしか出会えないピックルボール用品を探す楽しみもあります。旅のついでにふらっとお店に立ち寄って、見慣れないラケットやグッズに出会う——そんな寄り道も、海外でプレーするからこその贅沢な体験です。
日本のプレイヤーが密かに求めているもの
今回、日本でピックルボールをしている方々からの要望を整理したところ、口をそろえて出てきたのが、以下のような声でした。
①本格的なコートで思い切りプレーしたい。
専用コートがまだ限られている日本とは異なり、ホーチミンにはあちこちに専用コートがあるので、環境そのものを存分に味わえます。朝から晩まで好きな時間帯に借りられるコートも多く、「せっかく来たなら1日中でも打っていたい」という願いを叶えやすい環境です。
②現地でしか出会えない用品を探したい。
日本よりも安くピックルボール用品を購入できる場合があることも魅力の1つです。旅先でふと見つけたラケットが、意外と一番のお土産になったりするのかもしれません。
③国籍を超えていろんな人とプレーしたい。
日本ではまだ競技人口が少なくどうしても顔ぶれが固定しがちですが、ホーチミンのコートにはベトナム人はもちろん、世界各地からプレイヤーが集まります。特にオープンプレイでは、その場に居合わせた初対面同士でも自然とラリーが始まり、会話が生まれる。この出会いが目当てという人も少なくないようです。言葉が完全に通じなくても、ボールを打ち合ううちに自然と打ち解けていくのも、ピックルボールならではの面白さだと思います。
④本格的なレッスンを受けてみたい。
現地のプロコーチから直接指導を受けるという経験は、日本ではなかなかできません。基礎から丁寧に教えてもらえる環境が整っているコートも多く、「せっかくならきちんと上達して帰りたい」という人にも向いています。
ピックルボールを入り口に、ベトナムを楽しむ
プレーして、現地の人と話して、用品を探して、街を歩く。ピックルボールって、実はそのすべてへの入り口になる気がします。スポーツをしにベトナムへ行って、そのスポーツをきっかけにベトナムそのものをもっと楽しんでしまう。観光地を巡るだけの旅とはひと味違う、体を動かしながら人とつながる旅の形。そんな旅のスタイルも、これからアリになっていくのではないでしょうか。


