ベトナム、特にホーチミンを訪れたとき、コンビニに入って「ちょっと意外だな」と感じることがあるかもしれません。それは、商品が並んでいるだけではなく、イスやテーブルが置かれ、店内で座って過ごせる店舗もあることです。カップ麺や飲み物、お菓子などを買って、会計を済ませたら、そのまま店内で食べる。友達と話している人もいれば、スマートフォンを見ながら過ごしている人、さらには勉強や仕事をしている人もいます。
日本のコンビニに慣れている人なら、「どうしてベトナムのコンビニには座る場所があるの?」と疑問に思うのではないでしょうか。実は、このイスやテーブルには、ベトナムならではのコンビニの使われ方が関係しています。
私自身、ホーチミンのコンビニを利用していると、買い物だけでなく、食事や休憩のためにイートインスペースを使っている人をよく見かけます。今回は、実際の店内の様子も写真で紹介しながら、その理由を考えてみます。
この記事では、ホーチミン市内での筆者の観察に加え、現地の消費者調査や各コンビニチェーンの公式情報を参考に、ベトナムのコンビニに見られるイートイン文化を整理しています。
店内を観察していると、イスやテーブルは単に商品を食べるためだけに使われているわけではありません。飲み物を片手にスマートフォンを見ている人、友達と会話を続けている人、購入した軽食を食べながら次の予定を確認している人など、過ごし方はさまざまです。特に暑い時間帯には、買い物と休憩を同時に済ませているような利用者も見られます。
ベトナムのコンビニは、買い物だけをする場所ではない
日本でコンビニと聞くと、食べ物や飲み物を買ったり、料金を支払ったり、日常生活に必要なさまざまな用事を済ませたりする場所をイメージする人が多いと思います。ベトナムでも基本的には同じです。
ただ、特にホーチミンのような大都市では、コンビニが食事をしたり、少し休憩したり、一日の予定の合間に時間を過ごしたりする場所になることもあります。
イートインスペースのある店舗に入ると、買ったものをそのまま席に持っていって食べている人をよく見かけます。店内にはエアコンがあり、イスやテーブルが用意されていて、店舗によってはWi-Fiも利用できるため、少し休みたいときにも便利です。
Q&Meがホーチミンで実施した調査では、コンビニの利用者を対象としたオンライン調査500人と、店舗での調査721人から、イートインスペースの利用実態が調べられています。調査結果によると、回答者の約80%がイートインスペースを利用した経験があると回答しました。調査は2018年12月に実施されたもので、立地の便利さやエアコン、Wi-Fiなどの快適さが利用理由として挙げられています。また、イートインスペースは食事だけでなく、友達との会話や休憩にも使われていました。
なお、この調査は2018年当時のホーチミンにおける利用傾向を示したものであり、2026年現在のコンビニ利用者全体の割合を直接示すものではありません。現在の状況を考える際には、当時の調査結果と、現在の店舗で見られる様子を分けて捉える必要があります。
なぜコンビニにイスとテーブルがあるの?
一見すると、コンビニの中にイスやテーブルがあるのは少し不思議に感じるかもしれません。そのスペースがあれば、商品を置くための棚を増やすこともできます。店舗側にとっても、イートインスペースは、商品を購入した人が店内で過ごせる環境を整える設備の一つと考えられます。ただし、設置理由や運用方法はチェーンや店舗によって異なります。
ただし、すべてのコンビニにイスやテーブルが設置されているわけではありません。例えば、Circle Kの公式店舗検索では、店舗情報に「Cửa hàng có ghế ngồi(座席のある店舗)」と表示される店舗があります。店舗の広さや立地によって設備が異なるため、イートインスペースの有無は店舗ごとに確認する必要があります。
例えば、ホーチミンの昼間を想像してみてください。観光で街を歩いていて、暑さで少し疲れてきたところにコンビニを見つけます。そこで水を買い、ついでに軽食も買って、エアコンの効いた店内で少し休憩する。
このとき、コンビニが提供しているのは水や食べ物だけではありません。買い物をしながら、ちょっと休める空間も一緒に提供しているのです。
そのため、カップ麺やスナック、温かい軽食など、その場ですぐ食べられる商品とも相性がいいと考えられます。Q&Meの調査でも、スナック、カップインスタント麺、ラウなどがイートインで利用される人気商品として紹介されています。
簡単にまとめると、イスがある → 店内で食べやすい → すぐ食べられる商品がより利用しやすい → コンビニに立ち寄る理由が増える。
このように、イートインスペースは、小売とサービスを自然につなぐ役割も果たしています。
ベトナムでは、イートインスペースで食事だけをするわけではない
ここが、特に面白いところです。イートインスペースを見てみると、いつもみんなが食事をしているわけではありません。
ホーチミンのコンビニを対象にしたQ&Meの調査では、食事以外にも、友達と話したり、スマートフォンを使ったり、休憩したり、本を読んだり、勉強やゲームをしたりする人が見られました。中でも、友達との会話やスマートフォンの利用は比較的多く見られた行動です。
だからこそ、ベトナムのコンビニは、単なる「買い物をする場所」というより、ちょっとした生活空間のように感じられることがあります。
特に学生や若者にとっては、エアコンの効いた店内で、気軽に座れて、カフェのように飲み物を注文しなくても過ごせることが魅力の一つになっているのかもしれません。
食事をしたり、友達と会ったり、学校の後に勉強したり、仕事と自宅の間の時間を過ごしたりと、都市部の若者を中心にコンビニの使われ方も広がっています。
ベトナムと日本では、コンビニの使い方が少し違う
違いは、単純に「ベトナムにはイスがあって、日本にはない」ということではありません。実際、日本にもイートインスペースのあるコンビニはあります。
大きく違うのは、そのスペースが日常の中でどのように使われているかです。ベトナム、特にホーチミンでは、コンビニがいくつもの役割を同時に担うことがあります。
買い物 → その場で食べる → 休憩する → 暑さをしのぐ → 友達と話す → スマートフォンを使ったり、少し勉強したりする。
一方、日本のコンビニは、まず「必要なものを手早く買える場所」というイメージが強く、日常生活を支えるさまざまなサービスも充実しています。
もちろん日本にもイートインスペースはあります。例えばミニストップでは、多くの店舗にイートインスペースを設けています。一方、ファミリーマートは2024年10月、当時約7,000店舗に設置していたイートインの一部を売場へ変更し、商品やサービスの品揃えを広げる取り組みを発表しました。
つまり、同じ「コンビニ」という仕組みでも、それぞれの国の暮らし方やニーズに合わせて、少しずつ違った形になっているのです。
日本人旅行者にとって、コンビニはもう一つ便利な使い方がある
ホーチミンを旅行しているとき、コンビニはちょっとした休憩スポットとしても便利です。
暑すぎるときは?冷たい飲み物を買って、エアコンの効いた店内で少し休むことができます。
急に雨が降ってきたら?近くのコンビニに入り、必要なものを買いながら、雨が弱くなるまで短時間待つこともできます。ただし、混雑時は長時間の滞在を避け、店舗の状況に配慮しましょう。
水やお菓子、軽食を買いたいときは?一つの店舗でまとめて購入することができます。
店舗によってはトイレがある場合もありますが、すべてのコンビニにあるわけではありません。必要な場合は、事前に確認するか、店員さんに聞いてみると安心です。
だからこそ、ベトナムを旅行するときは、コンビニを「買い物をしたらすぐ出る場所」とだけ考えないほうがいいかもしれません。
ぜひ店内のイスやテーブルにも注目してみてください。
友達とカップ麺を食べながら話している人、スマートフォンを見ながら休んでいる人、忙しい一日の合間に勉強している学生など、ホーチミンの日常らしい光景を見ることができるかもしれません。
小さなイスとテーブルが教えてくれること
実は、ベトナムのコンビニを見ていて、私が一番面白いと感じるのがこの部分です。
数脚のイスとテーブルは、一見するとちょっとした設備にしか見えません。でも、そこにはベトナムの人たちがコンビニをどのように使っているのかがよく表れています。コンビニは、ただ「買う」ための場所だけではありません。
場合によっては、食べたり、休んだり、少し時間を過ごしたりする場所にもなります。そして、こうした使い方が組み合わさることで、ベトナムの都市部にあるコンビニならではの風景が生まれているのかもしれません。
ホーチミンの街を歩いていてコンビニを見つけたら、商品だけでなく、店内の設備にも目を向けてみると、その土地ならではの使われ方が見えてきます。イスやテーブルの有無、店内の混雑状況、利用者の過ごし方などを観察すると、コンビニが地域の生活の中でどのような役割を担っているのかを身近に感じられます。


