ベトナムのお寺を訪れる前に知っておきたいこと
ベトナムを旅行していると、街のあちこちで大小さまざまなお寺を見かけます。外国人旅行者にとっては歴史や建築を楽しめる観光スポットですが、ベトナムの人々にとっては、文化や信仰、そして日常生活に深く根付いた大切な場所でもあります。
私は子どもの頃から、お正月や祝日に家族と一緒にお寺へ行くのが習慣でした。ここ数年は、母が安居(An cư Kiết hạ)※の期間中、お寺の医務室でボランティアをしているため、以前より頻繁に訪れるようになりました。母を待ちながら境内の木陰で鐘の音を聞き、静かに手を合わせる人々を眺めていると、お寺は願い事をする場所であるだけでなく、忙しい毎日の中で心を落ち着かせる場所でもあるのだと感じます。
※安居(An cư Kiết hạ)とは、僧侶や尼僧が雨季の約3か月間、一つの寺院で修行に専念するベトナム仏教の伝統です。
初めてベトナムのお寺を訪れる方は、ぜひ次のポイントを参考にしてみてください。
ベトナムの人はいつお寺へ行くの?
ベトナムの人は、お正月や釈迦誕生日、ヴーラン※、旧暦の1日・15日などによくお寺を訪れます。しかし、それ以外の日でも、自分が行きたいと思った時に自由に足を運ぶ人がたくさんいます。
家族の健康や仕事、学業の成功を祈る人もいれば、特別な願い事はなく、静かな場所で心を休めたいという理由で訪れる人もいます。私もお寺へ行くと、門をくぐった瞬間から空気が変わり、自然と気持ちが落ち着いていくのを感じます。
※ベトナムの「ヴーラン」は、日本のお盆に少し似た仏教行事です。ご先祖様を供養し、両親への感謝を伝える日です。
お寺へ行くときの服装
お寺では伝統衣装を着る必要はありませんが、露出の少ない落ち着いた服装が好まれます。キャミソールやショートパンツなどは避けるのがおすすめです。
旅行者の方は、アオザイやアオバーバー、またはĐồ lam(ドーラム)と呼ばれる灰色の参拝着を着るのもおすすめです。お寺の雰囲気によく合い、旅の思い出として素敵な写真も残せます。
また、ベトナムでは派手なメイクを控え、シンプルな身だしなみで参拝する人が多くいます。これは神聖な場所への敬意を表すためです。
お寺での基本マナー
三つの門があるお寺では、右側の門から入り、左側の門から出るという習慣があります。中央の門は昔、王や高僧が通る門とされていたため、今でも敬意を込めて避ける人が多くいます。
ベトナムには「Đi nhẹ, nói khẽ(静かに歩き、静かに話す)」という言葉があります。お寺では大きな声で話したり、騒いだりせず、本堂では携帯電話をマナーモードにしましょう。
仏様の正面を避け、少し横に立って写真を撮ると、より丁寧な印象になります。
写真:筆者撮影
また、仏像には触れないことも大切なマナーです。写真撮影をする際は案内表示を確認し、法要中や撮影禁止エリアではルールを守りましょう。
ベトナムの人はお寺で何をするの?
参拝では、一人につき1~3本のお線香を供え、仏様の前で合掌して礼拝します。
その後、功徳箱にお布施を入れる人が多く見られます。金額に決まりはなく、私が普段見かけるのは1,000ドン、2,000ドン、5,000ドン、10,000ドンほどの少額紙幣です。
功徳箱に納めるお布施としてよく使われる紙幣
お寺の功徳箱
写真:筆者撮影
お供え物には、生花や果物、精進料理が一般的です。ベトナムのお寺では肉や魚などを供えることはほとんどありません。
お寺は願い事をする場所だけではない
「お寺=お願い事をする場所」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、私にとってお寺はそれだけではありません。
母と一緒に何度もお寺を訪れる中で、私が感じたのは、多くの人が求めているのは願いが叶うこと以上に、心が穏やかになる時間だということです。
忙しい日常から少し離れ、自分と向き合い、心を整える。そんな時間を過ごせるのがお寺の魅力だと思います。
ベトナムへ旅行する機会があれば、ぜひ一度お寺を訪れてみてください。基本的なマナーを知っておくだけで、ベトナムならではの文化をより深く感じられるはずです。
旅が終わる頃には、美しい写真だけでなく、お寺で感じた静けさや穏やかな気持ちも、きっと心に残ると思います。
※この記事の内容は、2026年7月時点の一般的な情報と、筆者自身の体験をもとにまとめています。地域やお寺によって作法が異なる場合があります。
参考資料
- ベトナム仏教協会(Giáo hội Phật giáo Việt Nam)
- ベトナム政府観光局
- ホーチミン市観光局
※本記事は、2026年7月時点で公開されている情報および筆者自身の体験をもとに作成しています。最新の参拝ルールや行事の日程については、各寺院または公式機関の案内をご確認ください。


