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同じ「バインカン」という名前でも、地域によって味わいや具材、さらにはスープの色まで大きく異なることをご存じでしょうか。
私自身も実際にその土地へ行って初めて知ったのですが、これほど多様なバインカンが存在するとは思いませんでした。各地域ならではの食材が使われ、まさに“ご当地グルメ”として根付いています。
ここでは、私が実際に食べて印象に残った 4 種類のバインカンをご紹介します。
ニャチャン名物:魚つみれ・魚ほぐし入りバインカン
ベトナム語: Bánh canh chả cá cá dầm
私が生まれ育ったニャチャンで、人生で一番多く食べてきたのがこの魚つみれ・魚ほぐし入りバインカンです。
具材
カツオ、エソ、ニョンなど新鮮な魚を使ったつみれ
サワラやシイラなどの身をそのまま使った“魚ほぐし”
うずら卵、コリコリしたクラゲ
麺
米粉で作った細めで柔らかい麺
もう一つは太くて丸いタイプの麺
スープ
魚の骨をベースに、タマネギ、トマト、パイナップルなどを煮込んだ澄んだスープ。
魚の香りがふわっと漂いますが、まったく生臭さがなく、優しい甘みが特徴です。
ホーチミン市でも一度食べましたが、エビやイカが加わるなど少し違いはあるものの、味の方向性はニャチャンのそれと大きく変わりませんでした。機会があればぜひ試してみてください。
北中部の人気料理:バインカン・カーロック(雷魚のバインカン)
ベトナム語:Bánh canh cá lóc
フエ、クアンビン、クアンチなど北中部で親しまれているのがバインカン・カーロック です。
初めて食べたのは、父の故郷であるクアンチへ向かう途中、フエの道端の食堂に立ち寄ったときでした。
具材
メインは雷魚(カーロック)。揚げる場合と蒸す場合があります。
特徴的な提供スタイル
一部の店では、土鍋のまま調理し、そのままテーブルに運ばれてくるので、本当にアツアツの状態で食べます。初めての方は驚くかもしれません。
麺
タピオカ粉を使ったコシのある太めの半透明麺。
スープ
雷魚を煮込んだスープは、店によってやや黄色がかった透明感のある色、または澄んだ色などさまざま。味わいは濃厚でほんのり甘いのが特徴です。
近年はニャチャンやホーチミン市でも扱う店が増え、広く知られるようになりました。
ホーチミン市で出会った驚きの味:バインカン・カニ
ベトナム語:Bánh canh cua
ホーチミン市に住むようになって初めて知ったのが、カニのバインカン(バインカン・クア)です。
具材
カニ味噌(メイン)
カニのつみれ、チャールア(豚ハム)
うずら卵、エビ
店によっては“揚げパン(クオイ)”を一緒に食べることも
麺
タピオカ麺の店もあれば、米粉で作った太麺を使う店もあります。
スープ
とろみのあるスープですが、スープ状を保っていて重たさはありません。
ほんのりオレンジ色で透明感があり、カニの旨味がしっかり感じられる、香り豊かな味わいです。
フーイエンといえばこれ:バインカン・ヘ(ニラのバインカン)
ベトナム語:Bánh canh hẹ
私は7月にフーイエンを訪れ、友人に案内してもらい、名物のバインカン・ヘ(ニラ入りバインカン)を食べることができました。
特徴
フーイエンはニラの産地として有名で、香りが強すぎず、優しい風味が魅力です。
運ばれてきた瞬間は、器がニラでいっぱいに見えるほど。
しかし下から麺をすくうと、バインカンの麺と具材が姿を現します。
味わい
シンプルながら香りが良く、身体に優しい印象の一杯です。
まとめ
4種類のバインカンを食べ比べてみると、具材だけでなく、
味・香り・色・麺の種類・調理方法・地域性まで、すべてが異なることに気づきます。
ここで紹介した内容はあくまで私の個人的な感想ですが、実際に食べてみると、その土地ならではの違いをもっと深く感じられるはずです。
もし機会があれば、ぜひ全部のバインカンを味わってみてくださいね。
