ベトナムは北・中・南の三つの地域で気候や文化、特産がそれぞれ異なりますが、地域ごとに特徴的な甘いお菓子があります。前回はハノイの「バイン・コム」、ソクチャンの「バイン・ピア」、そして中部の「バイン・トゥアン」を紹介しました。今回はその続きとして、ほかの伝統的なお菓子を紹介したいと思います。
バイン・ザー・ロン(Bánh da lợn)
由来
南部の代表的なお菓子の一つで、値段も手頃でいろいろな味があります。
「ザー・ロン」とはベトナム語で「豚の皮」という意味ですが、もちろん本物の皮を使っているわけではありません。
仕上がったときの見た目や層の質感が豚の皮のように見えることからそう呼ばれています。
材料と作り方
作り手によって使う材料が少しずつ違って、米粉やタピオカ粉をベースに、さつまいもやタロイモなどを混ぜてもちもち感や色を出します。
層の間に緑豆あんを挟むタイプもあります。
見た目と味
淡い緑のパンダンリーフ味や、紫色のタロイモ味などがあり、見た目もとてもカラフルです。
層を重ねて四角に切るものが多いですが、層を巻いて渦巻き模様にするタイプもあってとても可愛いです。食べるとココナッツミルクの香りがふんわりして、甘すぎず優しい味わいです。
小話
実は最近、「豚の皮のバイン・ザー・ロン」という、甘い層の中にカリカリの豚肉を入れた変わり種もあるそうです。私はまだ食べたことがありませんが、ちょっと気になります。
ベトナム南部の市場ではよく売られているので、見かけたらぜひ試してみてください。
バイン・イット・ラー・ガイ(Bánh ít lá gai)
由来
このお菓子は中部ベトナム、特にビンディン省やクアンガイ省で有名です。フン王の末の娘にまつわる伝説があると言われています。南部にも似たお菓子がありますが、私がよく食べたのは中部のものです。
見た目と材料
外側は「ガイ」という植物の葉をすりつぶして煮詰め、もち粉と混ぜた黒い生地で包まれています。
中には緑豆とココナッツ、またはピーナッツやごまを混ぜたあんが入っています。
私は個人的に緑豆あんが一番好きで、黒いもちもちした皮とのバランスがちょうどよく、とても素朴でおいしいです。
形は三角で、重ねるとチャンパ遺跡の塔のように見えるのも面白いです。
伝説
このお菓子には、王の末娘が兄のラン・リューに影響を受けて、「バインチュン」と「バインザイ」の両方の味を一つにまとめた新しいお菓子を作ったという話があります。
その想いから生まれたのがこの「バイン・イット」なんだそうです。とてもロマンチックな由来ですよね。
バイン・ボー(Bánh bò)
由来
バイン・ボーは中国から伝わったお菓子がベトナム風にアレンジされたもので、今では全国で親しまれています。「ボー」は“広がる”“膨らむ”という意味で、生地を発酵させて蒸すとふんわり膨らむことからこの名前が付けられたそうです。
材料と特徴
米粉、ココナッツミルク、砂糖、そして少しの発酵種を混ぜて作ります。
発酵の過程で小さな気泡ができ、独特のふんわり・もちもちした食感になります。
見た目と味
私がよく食べるのは、白くて素朴な蒸しタイプ。軽い酸味があり、ほんのり甘くてとても優しい味です。
他にも、パームシュガーを使った「バイン・ボー・トットノッ」(黄金色で香ばしいタイプ)や、焼いて香りを出した「バイン・ボー・ヌォン」などもあります。コーヒーやお茶と一緒に食べると最高です。
最後に
今回紹介した3つの伝統菓子は、それぞれ地域によって個性があり、どれも素朴で懐かしい味です。
こうして書きながら思い出していると、また食べたくなってきました。
これらは、ベトナムの伝統的な甘いお菓子と聞いて私が思い浮かべたものの一部です。
これからも、思い出したり、新しいお菓子を知ったりしたら、また皆さんに紹介したいと思います。
もし次の続きがあったら、ぜひ楽しみにしていてくださいね。
