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ベトナム・ホーチミンの魅力といえば、やっぱり食。
旅行者の多くが「せっかくなら本当に美味しい店に行きたい!」と思うのではないでしょうか。でも、ガイドブックやSNSで“おすすめ”と紹介されている店を見ると、どこも似たようなラインナップ。
たとえばフォーの名店として有名なフォーホア(Phở Hòa)、バインミー人気No.1といわれるバインミーヒュンホア(Bánh Mì Huỳnh Hoa)、雰囲気の良いクックガッククアン(Cục Gạch Quán)やシークレットガーデン(Secret Garden)。
最近ではミシュランガイドに選ばれたレストランや、タオディエン(Thảo Điền)エリアのフレンチレストランも注目されています。
これらの店はどこも美味しく、雰囲気も抜群。“失敗しない店”として間違いなくおすすめできます。
しかし、ホーチミンに10年以上暮らしてきた立場から見ると、「本当に美味しい店」にはもう少し違う顔もあるように思うのです。
ガイドブックの“有名店”はやっぱり安心感がある
観光客に人気の有名店は、何よりも安心感があります。料理のクオリティが安定していて、店内は清潔。英語や日本語のメニューがあり、店員さんも慣れている。初めての海外旅行でも安心して入れるというのは、実はとても大きな価値です。
フォーホアの牛骨スープはやっぱり絶品ですし、バインミーヒュンホアの具材のボリューム感、パンの香ばしさも一度は食べておくべき名物。クックガッククアンやシークレットガーデンのように、ベトナムの家庭料理を雰囲気たっぷりに味わえるレストランも、旅行の思い出を彩る素敵な場所です。
最近では、ミシュランガイド掲載の高級レストランも増えており、タオディエンのフレンチレストランなどは在住者の間でも話題になるほど。“ベトナム料理=庶民的”というイメージを覆す、洗練された一皿に出会えるのもホーチミンの面白さです。
現地の人が言う「もっと安くて美味しい店」
とはいえ、現地のベトナム人の友人に聞くと、「フォーホアは高い」「バインミーヒュンホアは観光客向けだよ」といった声が返ってくることも多いです。
実際、ローカルの人たちは、同じ料理でももっと手頃で美味しい店をいくつも知っています。路地裏にあるブンチャー(Bún Chả)の専門店、朝だけ営業しているボーコー(Bò Kho)の屋台など――
観光客があまり行かない場所に、思わぬ名店が隠れているのです。
フォーより濃厚でスパイシーなボーコーのスープにフランスパンを浸して食べる瞬間、「こういう味がベトナムの“日常の美味しさ”なんだ」と感じることがあります。また、炭火の香ばしさが広がるブンチャーは、ハノイ発祥ながらホーチミンでも人気が高く、ベトナムの人たちが“家庭の味”として親しんでいる料理です。
「在住者と行くごはん」に感じるプレッシャー
日本から知人がホーチミンに遊びに来て、「せっかくだから一緒にごはんでも」と誘われることがあります。
このとき、どこに連れていくか――実は毎回悩みます。
ガイドブックに載っている有名店は安心ですが、“現地在住者と行くなら、もっとローカルな名店に連れていってくれるんじゃ?”という期待を持たれている気もするんです。
観光客向けの店に案内すると、「せっかく現地に住んでるのに、ここ?」と思われそうで少し気が引ける。でも、逆にローカル食堂に連れて行って、「えっ、ここ大丈夫?」となるのも避けたい。
結局、有名店が一番無難なのですが、在住者としては“知る人ぞ知る名店”も紹介したい――そんな葛藤が常にあります。
実際は「有名店も美味しいし、ローカルも面白い」
この10年で実感したのは、「有名店=観光客向け」とは限らないということ。
多くの有名店は、実は地元の人たちの信頼も得ています。たとえばフォーホアのスープは、ホーチミンっ子にとっても“老舗の味”であり、世代を超えて愛されています。
一方で、ローカルの屋台にも素晴らしい料理がたくさんあります。ブンチャーの炭火焼肉の香り、ボーコーの濃厚スープ、どちらも“日常の美味しさ”の象徴。観光では出会えない味こそ、ベトナムらしさの原点でもあります。
「誰と食べるか」で店を選ぶのが正解
旅行者と在住者では、食に求めるものが少し違います。
旅行者は「安心と特別感」を求め、在住者は「日常の中の発見」を楽しんでいる。
だからこそ、どちらが“正解”ということはありません。
- 初めてホーチミンを訪れる人となら、フォーホアやクックガッククアンへ。
- 2回目以降の人とは、ローカルのブンチャーやボーコーの店へ。
このバランスこそが、在住者だからできる“ちょうどいい案内”です。
“本当に美味しい”とは、味+体験のこと
有名店も、路地裏の食堂も、それぞれに良さがあります。フォーホアの澄んだスープも、ブンチャーの炭火の香りも、どちらも「その場所で食べるからこそ美味しい」。
私は最近、「どっちが美味しいか」よりも、“誰と、どんな時間を過ごしたか”が美味しさを決めると思うようになりました。観光客も在住者も、それぞれの「美味しい」に正解はありません。
ただ一つ言えるのは、ホーチミンという街には、そのすべてを包み込む“食の懐の深さ”があるということです。
まとめ:ガイドブックもいい、ローカルもいい。両方行こう。
ホーチミンの食は多様で、奥が深い。フォーホアやバインミーヒュンホアといった有名店は、“ホーチミンの味を知る入口”として最高の選択肢です。一方で、ボーコーやブンチャーの屋台には、“ベトナムの暮らしそのもの”が詰まっています。
もしあなたが次にホーチミンを訪れるなら、
まずは有名店で定番の味を楽しみ、そのあと少し足をのばしてローカルの店を探してみてください。
どちらにも、それぞれの“本当に美味しい理由”があります。
