朝の街に広がる2つの風景
ハノイやホーチミンの朝。ホテルを出ると、まず目に飛び込んでくるのは活気あふれる伝統市場です。
農家から届いたばかりの野菜やハーブ、まだ跳ねる魚、色とりどりの南国フルーツ――まるでカラフルな 商店街 のように、通り全体が生活の匂いに包まれています。買い物客と店主のやりとり、値段交渉の声、バイクのクラクション…その喧騒そのものが市場の魅力です。
一方で、歩いて数分の場所には近代的なスーパー。冷房の効いた清潔な空間に、輸入食品やブランド商品が整然と並びます。値段はすべて明示され、誰でも安心して買える――日本のスーパーとほとんど同じ感覚です。ベトナムの街では、この「伝統」と「現代」が隣り合わせに存在しています。
なぜ市場は今も人気なのか?
2023年の統計によると、都市部の家庭の 6割以上が依然として市場を主な食材購入先に選んでいます。理由は単純です。
値段が安い
新鮮な食材が豊富
「顔なじみ」への信頼感
特に主婦や高齢者にとって、市場は単なる買い物の場ではなく、毎日の挨拶や世間話を楽しむ コミュニティの中心。ここには人と人とのつながりがあり、それが市場の魅力を支えているのです。
スーパーは若い世代の味方
一方で、都市の若い世代や共働き家庭はスーパーを好む傾向が強まっています。
調理済み食品やお惣菜が手に入る
輸入品やオーガニック食品が豊富
空調が効いた快適な空間
買い物は「効率的でスマートな体験」となり、週末には家族連れで訪れるレジャースポットにもなっています。日本と同じく、ショッピングモール併設型の大型スーパー(イオンモールやロッテマートなど)も増え、食材購入は娯楽の一部に変わりつつあります。
新しい流れ:コンビニとオンライン
ここ数年で急成長しているのが 24時間営業のコンビニとアプリを使った宅配サービス です。
Circle K、FamilyMart、Vinmart+ などのコンビニが都市部の至る所に広がり、若者の「夜食スポット」としても人気。
GrabMart や ShopeeFood などのアプリを使えば、スマホで注文した食材が数時間後には玄関に届きます。
コロナ禍をきっかけに一気に普及したオンライン宅配は、今や都市生活に欠かせない存在。伝統的な市場の国というイメージが強いベトナムですが、デジタル化のスピードには日本人旅行者も驚くはずです。
日本人旅行者へのおすすめ体験
ベトナムの「食の二面性」を味わうには、ぜひ両方を体験してみてください。
朝は市場へ
地元の人と同じ目線で買い物を楽しみましょう。活気ある雰囲気の中でフォーや揚げ春巻きをつまみ、ベトナムコーヒーを片手に観察すると、まるで暮らしているかのような気分を味わえます。
午後はスーパーへ
涼しい店内で、現地の人々がどんな商品を手に取っているか観察してみましょう。日本では見かけない南国フルーツやスパイスも豊富で、お土産探しにもぴったりです。
さらに、コンビニで夜食を買ったり、アプリで果物を注文してホテルで受け取ったりすれば、よりリアルなベトナムの生活を体験できます。
結び
市場は温かみと文化の香りを映し出し、スーパーは現代化する都市生活を象徴し、コンビニやオンラインはデジタル時代の利便性を示しています。
この4つが共存することこそ、今のベトナムを象徴する姿。旅行者にとっては、過去と現在、伝統と革新を一度に体感できる、魅力あふれる「食文化の旅」になるでしょう。
