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私が生まれ育ったビンズオンは、工業地帯として知られていますが、実は“食の宝庫”でもあります。
ここの料理は、ただ美味しいだけでなく、子どもの頃の思い出や果物の季節、家族の集まり…そんな記憶と結びついている特別な存在です。
ここでは、私が小さい頃から何度も食べてきた、まさに “ビンズオンの味” を感じられる料理をご紹介します。
鶏肉とマンゴスチンのサラダ(鶏+マンゴスチン)
価格:75,000 – 450,000 VND(約 ¥450 – ¥2,700)
程よく熟したマンゴスチンの歯ごたえと、放し飼いの鶏肉の旨みが同時に味わえる一皿。果実の爽やかさと肉の弾力、炒ったピーナッツと香ばしいフライドオニオンが合わさり、全体のバランスが非常に良いのが特徴です。タレは甘さ控えめで酸味も穏やか。季節感の強い料理で、食べると夏の記憶が一気に蘇ります。
マンゴスチンの季節になると、私は必ずこのサラダを食べます。
この料理が特別なのは、“程よく熟したマンゴスチン” を使うこと。皮は濃い紫ですが、中の房はサクッと歯切れよく、熟しすぎた柔らかさも、若すぎて渋い感じもありません。
食べると、3つの味わいが一気に広がります。
タレはビンズオンらしく、甘すぎず、酸味も控えめで、全体のバランスがとても良い。
“ここでしか味わえない夏の一皿” という言葉がぴったりです。
バインベオ・ビ(米粉蒸し+豚皮)
価格:15,000 – 33,000 VND(約 ¥90 – ¥200)
柔らかくもちっとした生地に、香ばしい豚皮と炒り米粉(トーストライスパウダー)の風味がアクセント。甘めで軽い酸味のタレが全体をまとめ、漬物の爽やかさが最後に効きます。素朴ながらも印象に残る、家庭的な美味しさです。
この料理は、子どもの頃から慣れ親しんだ味です。
ビンズオンのバインベオは、他の地域と違って“豚皮と炒り米粉(トーストライスパウダー)” の香りがとても良いのが特徴。
付け合わせの漬物が味を引き締めてくれます。
一皿はとても素朴ですが、その素直であたたかい味わいこそ、南部料理の魅力だと思っています。
牛肉のマムルオック(発酵ペースト)鍋
価格:20,000 – 140,000 VND(約 ¥120 – ¥850)
発酵ペーストの深い香りと、ココナッツウォーターの自然な甘み、レモングラスの爽やかさが一体となったスープが肝。薄切り牛肉をサッと湯がくだけで旨みが引き出され、たっぷりの青菜でさっぱりと食べられます。クセのある香りが好きな人には忘れがたい一品です。
初めてマムルオックの香りを嗅ぐと、驚く方もいるかもしれません。
でも私にとっては、この香りが鍋から立ち上る瞬間が“食欲のスイッチ”です。
スープの美味しさは、独特の組み合わせにあります。
牛肉は薄切りで、3〜5秒ほどサッと湯にくぐらせれば、柔らかくて甘みがしっかり感じられます。
素朴でありながらクセになる、地元ならではの味です。
タロイモ粥とウナギ(チャオ・モン・ルオン)
価格:30,000 – 50,000 VND(約 ¥180 – ¥300)
タロイモ由来のやさしいとろみが特徴の粥に、旨みのあるウナギを合わせた滋味深い料理。スパイスは控えめで、フライドオニオンや香草が香りのアクセントになります。風邪気味や疲れた時に食べたくなる“家庭の味”です。
体調が悪い時や学校から遅く帰った日、母がよく作ってくれたのがこの料理です。
ビンズオンのタロイモ粥は、タロイモの“ほっくりしたコク”がしっかり溶け込んで、自然なとろみが生まれます。
ウナギは天然ものが多く、身が締まっていて香りも良い。
やさしくて温かい、ほっとする一品です。
ドリアンで漬けた焼き鶏(ユニークな果実×肉の調和)
価格:200,000 – 500,000 VND(約 ¥1,200 – ¥3,000)
ドリアンの果肉を漬け込みに使うことで、肉に独特の甘い香りとコクが移ります。焼くと外皮は香ばしく、中はジューシー。ドリアンの主張は強すぎず、むしろ肉の旨みを引き立てる役割を果たします。挑戦的ですが、食べる価値のある一皿です。
「鶏×ドリアン」と聞くと、挑戦的に思えるかもしれません。
でも実際に食べると、驚くほど相性が良いことに気づきます。
鶏肉は放し飼いのものを使い、ドリアンの果肉でじっくり漬け込みます。
焼くと、皮が金色に輝き、ふんわり甘い香りが広がります。
ドリアン入りの揚げもち米と一緒に食べると、さらに満足感が増します。
“果物の町” と呼ばれる地域ならではのユニークな一品です。
塩ローストカシューナッツ(お土産にもおすすめ)
価格:300,000 – 500,000 VND/kg(約 ¥1,800 – ¥3,000)
気候と土壌が育てたコクのあるカシューナッツ。ローストすることで香ばしさが際立ち、塩味の効き具合も程よい。食べ出すと止まらない定番のお土産です。
ビンズオンのカシューナッツは、粒は大きくありませんが、とても香りが良くて甘みが濃いのが特徴です。
ローストすると、外側はカリッと、中はほんのりしっとりしていて、噛むたびに自然なコクが広がります。
お土産としても定番で、誰に渡しても喜ばれる味です。
最後に ― 私が誇りに思う“ビンズオンの味"
どの料理にも、私の思い出が詰まっています。
雨の日、家族団らんの日、果物の季節が来るのを待ちきれない日…。
ビンズオンの料理は、豪華ではありません。
でも、素材が素直で、味はしっかり、そして忘れられないほど温かい。
ほんの数品でも食べてみれば、私がなぜ故郷の味を誇りに思うのか、きっと伝わると思います。
