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10月のホーチミンの夜空で最大の見どころは、10月6日の「中秋の名月」です。ベトナムでは旧暦8月15日にあたるこの日は、家族が集まり、ランタンや月餅を楽しむ大切なお月見の日。ベトナムでは「中秋の名月(Tết Trung Thu/テット・チュン・トゥー)」は「こどもの日」とも呼ばれています。中秋節はもともと「収穫祭」でしたが、長い歴史の中で、家族が子どもに愛情を注ぐ日へと変化しました。この日には子どもたちに月餅やお菓子、おもちゃが贈られます。ベトナムの中秋の名月は、「月を愛でる日」であると同時に「子どもの幸せを祈るお祭り」でもあります。
中秋の名月とは?
旧暦8月15日のお月様のことを「中秋の名月」と呼びます。旧暦は月の動きをもとにした暦のため、現在のカレンダーとは日付がずれてしまいます。さらに2025年は「うるう6月」が挿入される特殊な年で、その影響で中秋の名月は(9月ではなく)10月6日となりました。中秋の名月といえば「満月」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。実は「満月」は一瞬のもので、2025年10月の満月は10月7日10:48(ベトナム時間)です。でも、たとえ1日ずれていたとしても、肉眼で見るととても丸くて美しいため、昔の人たちは「満月のお月見」として楽しんできました。夜空に輝く中秋の名月は、街のにぎわいを優しく照らし、異国で過ごす旅人にも忘れられない思い出をくれるでしょう。
中秋の名月にプラスして土星も!
2025年の中秋の名月(10月6日)の夜、月の近くに土星も姿を見せます。月の明るさに負けない黄色っぽい光を放ち、望遠鏡をのぞけば神秘的な「土星の環」も観察できます。今年の土星の環は、ほとんど真横から見える時期にあたり、薄い環になっています。古来より「名月」は特別な夜とされてきましたが、今年は月と土星が並ぶめぐり合わせも加わり、より一層ドラマチックな夜空を楽しむことができます。
10月の星空の見どころ
10月の夜空では、季節の移り変わりを感じられる光景が広がります。頭上にはまだ夏の名残をとどめる「夏の大三角」が輝き、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブが澄んだ秋の空に映えています。一方で、東の空からは「秋の四辺形」がのぼり、ペガスス座やアンドロメダ座など、秋を代表する星座たちが登場します。夏と秋、二つの季節の星座が同じ空に並ぶこの時期は、一度に多彩な星座を楽しめる絶好のチャンスです。過ぎゆく夏と訪れる秋を、夜空で感じてみてはいかがでしょうか。
10月は2つの流星群も
10月の夜空では、2つの流星群が見どころとなります。まず9日未明(午前4時ごろ)にピークを迎えるのが「10月りゅう座流星群(ジャコビニ流星群)」です。今年は満月を過ぎた月明かりの影響で観測条件はよいとは言えず、目にできる流星数は1時間あたり数個程度と予測されていますが、運が良ければ夜空を横切る明るい流れ星に出会えるかもしれません。そして21日ごろには「オリオン座流星群」が極大となります。母天体は有名なハレー彗星で、毎年安定して出現が見られる流星群です。観測に適した時間は夜半から明け方にかけて。オリオン座を中心として星が流れます。ホーチミンでは街明かりを離れた場所がおすすめです。秋の澄んだ空気の下、夜空を駆け抜ける流れ星を探してみてはいかがでしょうか。
さらに今年発見のレモン彗星も
2025年1月に米・レモン山天文台の観測によって発見されたレモン彗星(C/2025 A6)は、緑に輝く彗星と言われています。レモン彗星は21日に地球にもっとも近くなります。明るさは4等級くらいと予想されており、明け方の北東の空で、北斗七星の柄の部分をカーブにそって延ばしていったあたりに見つけやすくなります。双眼鏡を使ったり、三脚で固定してカメラで写真を撮ったりすると、さらにはっきりと観察できるでしょう。彗星は宇宙を旅する“星の旅人”。この彗星が次に地球に接近するのは西暦3421年とされ、1000年以上も先のはなし。宇宙の旅も「一期一会」です。
ホーチミンの10月:降水量・雨日数・風速など
10月のホーチミンは雨期の終盤にあたり、まだ雨が多い時期です。以下は主な気象データの目安です。
- 降水量(月合計):約190〜310mm
- 雨日数:15〜23日程度
- 1日の降水量(降る日の平均):約17.5mm
- 降る日確率:月初は約60%、月末は約41%に低下
- 風速(平均):約15.0km/h
- 湿度:およそ80〜85%
ホーチミンでは午後や夕方に短時間の強い雨が多く、局所的なスコールの傾向があります。長時間の大雨は比較的少なめです。
中部・北部での10月の降水・洪水リスク
一方で、中部や北部の地域は10月になると降水量が非常に多く、洪水や土砂崩れのリスクが高まります。
- 中部都市ドンホイ(Đồng Hới)では月間降水量が500mm前後に達する例もあり
- 山岳地帯では豪雨による河川氾濫や山崩れが発生しやすい
- 道路が冠水して交通が麻痺することもしばしば
ホーチミン vs 中部・北部:比較まとめ
- ホーチミン(南部):降水量は多いが、中部・北部ほど深刻な冠水は少ない
- 中部・北部:地形の影響で大雨による洪水・冠水リスクが高い
- 星空観察を計画する場合、ホーチミンは比較的安定した夜空に出会える可能性が高い
10月の星空情報リンク
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